亀の産卵
2008.10.13付 朝日俳壇より
亀の子を迎ふる汐のさして来る:(南相馬市)山崎秀夫
長谷川櫂 評:砂浜で卵からかえった海亀の子を迎えるように潮が満ちてくる。大いなる自然のめぐりを詠む一句。
母亀は、大潮の夜に上陸して産卵すると聞いています。産んだ卵に海水がかかっては卵は孵化できません。大潮の日に上陸して少し海岸の奥に産卵すれば、海水が上がってきて卵を濡らすということがない、という智恵なのでしょう。
孵化した子亀は、まず一気に沖へと遠ざかって行き、危険の多い海岸を離れていきます。
孵化した亀の子を海に放流する催しがよくありますが、孵化後、短期間とはいえ飼育することになります。これは、亀にとってはあまりよいこととはいえませんので、自然に任せてやったほうがよいのではないでしょうか。
蛇足:よくマスコミで、産卵中の母亀が「産みの苦しみの涙を流す」というようなシーンを流します(最近はは減ったかな)。あれは、涙ではありません。体内の塩分を排出する「塩類腺」という排出器官がちょうど目のところにあって、涙のように見えるだけです。人間の感傷に引きつけて物事を見ないようにしたいものです。
鳥にも塩類腺があって、くちばしからぽたぽた落ちます。魚を食べるときに余分に摂取した塩分を捨てているのです。
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