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2008年10月 8日 (水)

キンモクセイ(金木犀)

1007kinmokusei1 我が家のキンモクセイが咲いています。

家の周辺でも甘い香りが漂って、ふっと気分が和みます。

よく知られていることですが、日本には雄株しかないので結実しません。ということは、挿木などで増やしてきたのでしょうから、基本的に全部クローンということになります。そうなると、性質のばらつきが小さくて、開花のタイミングなどがほぼそろうので、「キンモクセイ前線」のようなものが描けるはずです。

ソメイヨシノがそうですね。全国のソメイヨシノがクローンなので、開花前線の進行が見えるのです。他の桜では、雑種であるため、性質が多様化し、開花のタイミングも多様化し、開花前線はくっきりしなくなります。

キンモクセイの開花前線を調べたらどうなるのでしょう?

きん‐もくせい【金木犀】モクセイ科の常緑小高木。中国原産の観賞用植物で、古くから庭木とされる。高さ約3メートル。葉は狭い長楕円形、革質で堅い。雌雄異株。日本のものはすべて雄株で結実しない。秋、橙黄色で芳香の強い小花多数を開く。漢名、丹桂。  <季語:秋>[広辞苑第五版]

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 この可憐な花を「見ばえがしない」とか「ぢぢむさく 古めかしい」とは、申し訳ないけれど、「見ばえのしない、ぢぢむさく、古めかしい」感性だ、と申し上げざるを得ません。

天声人語
  朝日新聞 2008年10月5日付
 駅までの道すがら、キンモクセイの甘い香りがどこからともなく漂ってきた。わが鼻には今年の「初もの」である。野菜や果物は時期を問わずに口に入る昨今だが、あの芳香は季節の記憶をよびさます。残暑は去って、空は高く、秋が定まったのを実感する▼花そのものは見ばえがしない。金紙を細かく刻んで枝につけたような様を、詩人の薄田(すすきだ)泣菫(きゅうきん)は〈ぢぢむさく、古めかしい〉と哀れんだ。一方で〈高い香気をくゆらせるための、質素な香炉〉と見立てているのは、ロマン派文人の感性だろう▼江戸時代の俳人、服部嵐雪(らんせつ)は〈木犀(もくせい)の昼は醒(さ)めたる香炉かな〉と詠んでいる。昼間と夜とでは、さて、どちらがかぐわしいだろう。いずれにせよ、街の行きずりにふと鼻先を流れるのが、この花の香にふさわしい▼香の代表がモクセイなら、見た目は菊だろうか。モクセイと同じく中国が原産で、奈良時代に不老長寿の薬草として渡来したという。その咲き姿が宮廷で愛され、もっぱら観賞用に育てられるようになった▼旧暦9月9日の重陽の節句には「着せ綿」という行事もあった。前の日に、菊の花に真綿をかぶせて一晩置く。朝になって、夜露に濡(ぬ)れて香りをふくんだ綿で顔や体をなでた。老いをぬぐい去り、若返ると信じられていたらしい▼〈綿きせて十程若し菊の花〉一茶。今年は、あさってが旧暦の9月9日にあたる。菊があれば、王朝時代の美顔術をまねてみるのも一興だろう。そしてその翌日は、はや二十四節気の寒露。澄みわたる静けさの中で、秋が姿を整えていく。

花の生きる姿を愛でているのではないのですね。色鮮やかな大きな花びらを画材のごとくに見ているのでしょうか?「見た目は菊」?通念に縛られた眼では、植物の生きる姿の一つの側面としての花の美しさは決して見えますまい。

通念や常識、既成の枠組みなど、とっぱずして、むき出しの、生身の人間の感性で「鼻をすませて」ごらんなさいませ。香りは記憶と強く結び付くもの。記憶の糸を手繰りながら、キンモクセイの香りをお聴きなさいませ。

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