ねこじゃらし
虫好きだから、ツマグロヒョウモン?
猫好きだだから、ネコジャラシ?
いえ、下のような歌や句が頭の隅にあって、ふと撮る気になったのです。、
2008/09/22 朝日歌壇より
現し身をつるみて重き糸とんぼ重きを乗せて水草撓む:(広島県)宮本悠三
2008/10/06 朝日俳壇より
心すぐ揺らいでしまふねこじやらし:(町田市)大野由香
観察者として写真を撮るときの一つのコツに、視線を固定しておいて「動き」だけを感知する、というやり方があります。草むらをぼんやり視線を動かさずに眺めていて、何かが動いたときに、視線をそちらへ向けるわけです。
細い草に、ハチやアブがとまると、必ずたわみます。宮本さんの歌では水草がイトトンボの重みでたわんだ、とあります。小さく、細く、重さなどないかのようなイトトンボですが、水草はその重みによってたわみます。それが物質であること、生きている生物であることの証です。生きることの重みであるかもせれません。
さて、私の写真には、実は「微笑」が入っています。ネコジャラシにツマグロヒョウモンがとまったためにたわんだのですが、ツマグロヒョウモンは大きなチョウです。ネコジャラシは大きくたわんで、地面についてしまいそう。
君は、ちょっと重いねぇ。君の体重計としてはネコジャラシはちょっと細すぎるかもしれない。そんなつぶやきが私の中にあったのです。
ネコジャラシはバネです。昆虫たちが載ると、「重さ」に比例してたわみます。今度、ネコジャラシを見たら、昆虫たちの体重計として見てみてください。ちょっとした感興があると思いますよ。
となると、大野さん、心は敏感な「はかり」なんですね。何に揺らぐのか、揺らすものが大きいのか、受ける心が揺らぎやすくなっているのか。
心の揺らぎを測ってみましょう。
◆ところで、こんな句もありました。
2008/09/29 朝日俳壇より
子蟷螂怒りたるまま草に揺れ:(山形県)菅野哲治
大串章 評:前肢をかざして子蟷螂が草の上で揺れている。一体何を怒っているのか。
草が揺れているのです。さて、9月29日の俳壇で「子蟷螂」というのは、よくわからないなぁ、という気分です。「蟷螂」自体は秋の季語なんですけれど・・・。季語の季節性によりかかってはいけないというのが、俳句ゼミをとっていたころから、先生と議論していたポイントなんですが。
「子蟷螂」はいくらなんでも、5月くらいのものです。
カマキリに感情移入しやすい私から見ると、怒っているわけじゃないのではないかと感じてしまいます。もちろん句の作者がそうみなしたのですから、そう見えたのですが。
不完全変態昆虫ですから、小さいながらも成虫と同じ形でカマを構えて、風に揺れる草の上に立って悠然とあたりを圧しているのだ、と私などは思ってしまうんですよ。
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