猫またぎ
10月6日付 朝日俳壇より
猫よりもきれいに秋刀魚食べる夫:(さいたま市)斎藤紀子
猫またぎ、というと「まずい魚」という意味もあるようですが、私がよく使うのは、「徹底的に食べ尽くしてしまって、食べられるところが全く残っていないので、猫もまたいでいってしまうような食べ方」という意味です。
秋刀魚を食べ尽くすご主人は、まったくの「ねこまたぎ」でいらっしゃる。嬉しくなりました、ご同輩がいて。
スーパーに行くと、まず安いアラのコーナーに行きます。切り実をとっただけで形になっていないからと安くなったアラはうまい。味が濃い。鯛の頭なんて最高の御馳走ですよね。野菜と一緒に煮て、すべての身を食べ尽くすのが私の大好きな食べ方。目玉まで食べちゃう、といったら笑われてしまいそう。
ホンマグロの刺身をとった後のアラは、形は悪いけれど、味は最高、そのまま生醤油で食べたり、火を軽く通して、「マグロステーキ」にしたり、アラを食べる幸せを満喫します。
私は「ねこまたぎ」です。
昔。母の実家で、おもてなしの料理に「だまこもち」というのがありました。「今日はだまっこだぞ」と宣言が出ると、嬉しくって。庭を走っていた鶏を一羽、絞めて料理します。伯母がさばくのですが、上手に解体していくのが、また面白くってねぇ。(自然と体内の構造なんか見せてもらいましたね。卵巣には、1mmもあるかどうかという黄身から、産卵寸前の大きな黄身までいっぱいあって、これを食べるのがまた楽しくって。)
子どもたちは、炊き立ての新米をすりこぎでつぶして、直径3cmくらいの団子をつくります。まるめる、ということを、「だまける」というので「だまこもち」なのです。
鶏のダシの、醤油味の鶏の鍋、セリが入っていて薫り高いのです。
有名な「きりたんぽ」の家庭版です。火で焼かないだけです。
満腹になるまで食べ尽くして、ダシをとった鳥の骨も、歯でわって、骨髄までしゃぶりつくすのです。これがうまい。伯母が笑って、あんたらが食べた後はもう、猫も食べないね。
最高の褒め言葉なのでありました。
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