蜻蛉
2008.10.27付 朝日歌壇より
仏足跡に秋の夕陽のこぼれ居て蜻蛉がひとつ来て平びをり:(伊那市)小林勝幸
新しい動詞を知りました。「平ぶ」というのが実は読めませんでした。「たいらぶ」かなぁ。歌の調子が合わないなぁ。そうか「ひらぶ」か。で、広辞苑を引いてみたら
ひら・ぶ【平ぶ】[自四]ひらたくなる。ひらむ。発心集「うやまひ拝みて―・びゐぬ」
[他下二]ひらたくする。ひらむ。[広辞苑第五版]
自動詞の方ですね。
仏さまの足跡だから歌になります。仏さまはきっと、トンボにも仏性があるとおっしゃるでしょう。ヒトに限定せず、生きとし生けるものすべてが仏さまの眼の中にありますから。他の宗教だと、ヒトと他の動植物を分けてしまいますから、あまりこういう歌にはならないでしょうね。
仏さまとトンボと夕陽、美しいものがそろいました。
虫好きの私は、こんな光景をイメージするとうれしくなります。
これは仏足跡ではありませんで、線路の柵のてっぺんなのですが、背中をお日さまに向けて、日向ぼっこするアキアカネです。
「平ぶ」というのは、単に平面的になるのではなく、トンボの場合、翅を下げて、ゆるやかな屋根型になることですね。
この姿勢は、トンボが完全にくつろいでいる、やすらかでおだやかな心理状態にあるということを示すサインです。
こんな姿を見かけたら、一緒にくつろいでください。一緒に日差しを浴びて、秋のおだやかなぬくもりを楽しんでください。
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