ミノムシ(Part1)
10月15日でした。我が家の塀の外の面に、ミノムシの蓑がくっついていました。中身は空っぽです。
それにしても、何年ぶりのことでしょう、ミノムシを見るのは。
20数年前にここへ来た当時は、いっぱいいたのです。ミノムシを裸にして、紙の切れ端や糸を与えると、それを使って蓑をつくる、といった遊びもできました。
私自身が子どものころは「ミノムシのハンドバッグ」というものがあって、母親も、あれはいいものよ、といっておりました。蓑を切り開き、内側の糸を張り巡らせた「布」をつなぎあわせて作ったものです。
それが、寄生バエのせいでしょうか、身の回りから消えてしまって、絶滅状態になってしまっていたのです。
それが、こうやって蓑だけですが、お目にかかれて、とてもうれしくなりました。復活してくれるといいですね。
◆ところで、このミノムシの生活史というのが実に風変わりなものなのです。
そのことを知ったのは、福音館の「かがくのとも」によってでした。「かがくのとも」という雑誌は子ども向けとはいうものの、非常に高度な内容を、決してごまかすことなく正面からとらえて、しかも噛み砕いて、核心部分をきちっと学ばせてくれる、最高の絵本でした。単なる知識絵本なんかではないのです。まさしく「かがくするほん」でした。
オスもメスも成虫には口がなく、食事をしません。オスには翅があってメスのところに飛んできて交尾をして死にます。メスは、翅も脚もなく、交尾後は腹の中の卵を腹の外へ産卵して腹は縮み、卵の塊に栓をするようにしてかぶさったまま、やがて死にます。
人間的な「おとな・こども」という概念は昆虫には適用できませんね。セミでも、幼虫時代の方が圧倒的に長くて、短い成虫期は、交尾・産卵という繁殖のために費やされるわけです。人間は大人を主として、子ども時代は未熟で大人になるための準備期間と考えていますが、そのような見方では昆虫は理解できないのかもしれません。
ミノムシも、食事をし、糞をし、歩き回り・・・というのが幼虫時代、蛹から羽化すると、幼虫時代に蓄えた栄養を使って、生殖を行うだけなんです。
ひどく考え込まされる生き方ですね。これを知った時は、ちょっとしたショックを受けたものです。生きるということの意味を考えてしまいます。
一匹の同一個体ではあるのだけれど、蛹という状態をはさんで、無性期と有性期が交代する、という一種の「世代交代」のようなもの、と考えることもできるのかなぁ、などと思ったり。
ウィキペディアから引用します。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%83%A0%E3%82%B7
生活環
オオミノガ (Eumeta japonica) は、蓑の内部で終令幼虫(8令)のまま越冬するため、枯れ枝の間で蓑が目立つ。4月から6月にかけて蛹化し、6月から8月にかけて羽化する。ガの形になるのは雄に限られる。この時、雄は口が退化しており、花の蜜など吸う事が出来ない。ガの体長は30~40mm。雌は無翅、無脚であり、形は小さい頭に、小さな胸と体の大半以上を腹部が占める形になる(また、雄同様口が退化する)。よってガにはならず、蓑内部の蛹の殻の中に留まる。雄は雌のフェロモンに引かれて夕方頃飛行し、蓑内の雌と交尾する。この時、雄は小さな腹部を限界近くまで伸ばし蛹の殻と雌の体の間に入れ、蛹の殻の最も奥に位置する雌の交尾孔を雄の交尾器で挟んで挿入器を挿入して交尾する。交尾後、雄は死ぬ。その後、雌は自分が潜んでいた蓑の中の蛹の殻の中に1,000個以上の卵を産卵し、卵塊の表面を腹部の先に生えていた淡褐色の微細な毛で栓をするように覆う。雌は普通は卵が孵化するまで蛹の殻の中に留まっていて、孵化する頃にミノの下の穴から出て地上に落下して死ぬ。20日前後で孵化した幼虫は蓑の下の穴から外に出て、そこから糸を垂らし、多くは風に乗って分散する。葉や小枝などに到着した1齢幼虫はただちに小さいミノを造り、それから摂食する。6月から10月にかけて7回脱皮を繰り返し、成長するにつれてミノを拡大・改変して小枝や葉片をつけて大きくし、終令幼虫に達する。秋にミノの前端を細く頸って、小枝などに環状になるように絹糸をはいてこれに結わえ付けて越冬にはいる。越冬後は普通は餌を食べずにそのまま蛹化する。
◆ところで、ウィキペディアには、こんな記述もありました。
ミノムシは秋に蓑を作るため、俳句では秋の季語となった。ミノムシ自体は発声器官を持たないのだが、季語では「蓑虫鳴く」と扱われている。一説によれば、これは秋の深い頃まで枝先で鳴くカネタタキの鳴き声であるという。
ミノムシが登場する作品
枕草子 - 「蓑虫、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、親に似てこれも恐しき心あらんとて、…八月ばかりになれば、「ちちよ、ちちよ」と、はかなげに鳴く、いみじうあわれなり」
松尾芭蕉 - みのむしの音をききにこよ草の庵
ミミズも鳴かないし、ミノムシも鳴かないのですが・・・。
蚯蚓鳴く:秋の夜、土中で「じいい」と鳴く声を、ミミズの鳴き声としたもの。実は螻蛄ケラの声。<季語:秋>[広辞苑第五版]
みの‐むし【蓑虫】ミノガ科のガの幼虫。樹木の枝や葉を糸で綴ってその中に潜み、蓑を負うような形をしている。袋の中で蛹化し、次いで成虫(ミノガ)となる。雌は成虫も無翅で幼虫と同様袋の中にすむ。袋は丈夫で、財布などの材料とした。鬼の捨子。鬼の子。<季語:秋> 。枕草子43「―いとあはれなり…八月ばかりになれば、ちちよ、ちちよ、とはかなげに鳴く」[広辞苑第五版]
俳句の世界ではカメも鳴くしなぁ。
亀鳴く:(藤原為家「川越のをちの田中の夕闇に何ぞと聞けば亀のなくなる」からか) 春の夕べ、どこかで亀が鳴いている。<季語:春>[広辞苑第五版]
こういう季語が、私を俳句から遠ざけるんですよね。もう、そんな季語やめたらぁ?
◆英語でミノムシのことを「Bagworm」というのだそうです。「バッグ虫」ですね。
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