センチニクバエ
センチニクバエといいます。先入観なしで見れば、結構美しいと思いませんか?自然の造形に「醜悪」というものはないと思っています。「醜悪」というものを発明したのはヒトの身勝手でしょう。
センチコガネやセンチニクバエの「センチ」ってなんだろう?「cm」の「センチ」かなぁ?と子どものころからずっと、調べもせずに謎だなぁ、と思っていました。今、奥本大三郎さんの「ファーブルの昆虫記」が刊行中ですが、これを読んでいて、なぞは氷解。
「センチ=雪隠(せっちん)」だったのです!念のために広辞苑を引いてみると
せんち【雪隠】→ せっちん
せっ‐ちん【雪隠】(セツインの連声) 便所。かわや。せんち。
調べてみもせず「謎だ」なんて、お恥ずかしいことでした。
◆私の子どものころは、トイレは汲み取り式で、家族では「御不浄」と呼んでおりました。今、御不浄といって、通じるかなぁ。
↓こんな呼び方をご存じですか?
これ、とある区立の小公園のトイレの入り口にかかっていました。
「とうす」と読んでトイレのことです。
とう‐す【東司】禅寺で、便所のこと。東浄(トウチン)。[広辞苑第五版]
◆ところで、このセンチニクバエ、とても思い出深いハエなのです。
思い出1:私が小学生のころ、今から50年くらいも昔の話。
部屋の中を飛んでいたセンチニクバエを目で追っていた私。当時は眼も反射神経もよくってねぇ、パッと手を伸ばして、手のひらの中にハエを捕まえてしまったんですね。いい運動神経でしょ。 で、ハエがつぶれもせず、かといってもう飛ぶこともできない程度に圧力をかけてから手のひらを開いて、見てビックリ!
手のひらの上に、長さ1mmあるかないかの小さなウジがいっぱい乗って歩いているではありませんか?まいったなぁ。あきれて、始末し、手を洗ったのは言うまでもありませんが・・・。
さてこの事実から何が分かるのでしょう?
そう、「センチニクバエは、卵胎生である!」ということです。知りませんでしたぁ。昆虫少年でしたが、卵胎生とはねぇ。多いに驚き、知識を増やしたことでした。絶対忘れえない強烈な「学習」でした。センチニクバエさんありがとう!
ウィキペディアです。参考まで。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A8
思い出2:娘が小学校1年生の夏。母の実家、白神山地を後ろにひかえた海に近い家。子育て中はこの自然があふれかえるほどの家で、毎年夏の2週間近くを過ごしていました。
ある日の夕方、伯母が農作業の帰りに捕まえたといって、左手にカマキリを包み込み、右手一本で一輪車を押しながら帰ってきました。従弟が子どものころ使っていた虫カゴに入れて観察。センチニクバエを一匹私がつかまえてきて、餌として与えました。空腹だったのでしょう、カマキリは素早くハエをとらえて食べ始めました。目の前でむしゃむしゃとハエを食べるカマキリを、食い入るように見つめる娘。ちょっと刺激が強いかなぁ、などと親としては思ったのですが、とにかく真剣な眼差しで見つめています。そのうち、ハエの腹から、ぽろぽろと、小さなウジが落ち始めました。娘がショックを受けはしないかと心配しましたが、そういうこともなく、30分くらいもかかったのでしょうか、カマキリはハエを食べ終え、カマや触覚などの手入れを始めたのでした。
見ている方も、ほっと息をついたのですが、これがカマキリの継代飼育6年間の始まりだったのです。今思っても、ものすごい出来事でした。
カマキリさん、センチニクバエさん、ありがとう!
特に虫好きというわけでもない伯母が、甥の幼い子のためにカマキリを捕まえてきてくれたのです。虫との付き合い方を十分に心得ている人でした。伯母さんありがとう。
◆さて、センチニクバエの写真をもう少し追加して、この記事を終わりましょう。
複眼が印象的ですね。
「ハの字」になっているのは触覚でしょうか。
これは郵便受けの上。
脚の先端に注目してください。吸盤状になっていまして、ガラス窓の垂直面でも歩けるわけです。
飛行する昆虫としての完成形ですね。(トンボも別な形の完成形ですが。)
カブトムシなんかはまっすぐ飛んできて、木に当たってバシッと音を立てて衝突してやっと止まる、というちょっと情けない飛び方ですが、ハエはスマート。
ホバリングもできるし、背面飛行もできるし、天井に着陸することもできるし、ガラスの垂直面にも着陸できるし、とてつもない反射神経でハエ叩きをかいくぐって逃げるし・・・。
素晴らしい飛行家なんですよお~。
ちょっとだけでいいです、見方を変えていただけたらウレシイです。(好きになってくださいとは言いません、見かけたら駆除していただいて結構です。でも、ハエだって優れた生きものなんだということは知っておいてくださいね。)
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