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2008年8月28日 (木)

巻き貝シミュレーション

0826katatumuri Katatumurihu この2枚を見比べてください。

いかがでしょう?

似てませんか?

左は飼育中のカタツムリ、右はエクセルのVBAで描いたグラフです。

◆ここで描いたのは「対数ラセン」(「等角ラセン」ともいいます)というものです。

Spiral1 この式を使って、VBAでグラフ用の点の座標を出力し、グラフの描画はエクセルにまかせました。

プログラムは下の通りです。これを実行するとA列とB列にデータが出力されますので、これを散布図にします。

------------------------------

'r = k * exp(a * θ)

Option Explicit
Const pi = 3.14159265358979

Sub Makigai()
    Dim r As Double, k As Double, a As Double, theta As Double
    Dim i As Integer
    Dim x As Double, y As Double
    Dim N As Integer    '角度の分割数
    Dim makisu As Integer
   
   
    k = 1
    a = 0.5
    makisu = 4
    N = 100
   
    For i = 0 To N
        theta = (makisu * pi / N) * i
       
        r = k * Exp(a * theta)
       
        x = r * Cos(theta)
        y = r * Sin(theta)
       
        Cells(i + 1, 1).Value = x
        Cells(i + 1, 2).Value = y
    Next i
End Sub

'-----------------------------
'k = 1, a = 1   → アサリ風
'k = 1, a = 0.5 → アワビ風
'k = 1, a = 0.1 → カタツムリ風, makisu = 6 の方がより巻貝風
'k = 0.05, a = 0.8 → 飛んで火に入る夏の虫 風
'k = 0.05, a = 0.2 → オウムガイ風

------------------------------

◆貝が成長していくときに、基本的に形が相似形のまま大きくなっていく、という性質からこういう数式が導かれます。(ここでは式の導出はしませんが。)

「カタツムリ風」という定数の選び方をして描いたのが最初のグラフでした。

◆プログラムの下のほうに、「オウムガイ風」というのがありますね。これを実行すると。

0827oumugai Oumugaihu いかがでしょう?

似てませんか?

オウムガイの殻は30年くらいも前にデパートの貝殻展でみつけて買ったものです。こういうものが簡単に売られていいのだろうか?と不審な気もしましたが入手しました。オオベソオオムガイだと思います。オウムガイは大きく括るとタコやイカの仲間の「頭足類」に入ります。巻き貝などとは違う仲間です。でも、成長の過程が自己相似という同じルールなので、同じプログラムでシミュレーションできるのです。

有名な化石生物「アンモナイト」はオウムガイと親戚です。

0827ammonite 私の持っているアンモナイトの化石です。

アンモナイトの巻き方はものすごくバリエーションが大きいようですね。

ここにお見せしたのは、オウムガイよりカタツムリの方に近いまき方のようでもありますね。

◆では次はアワビ。

0826awabi_2 Awabihu_2 どうでしょう?

ちょっと前に「アワビは巻き貝です」という話を書きましたが、再登場です。

こうやってみると、ナルホドアワビは巻き貝なのだ、と納得していただけるかと思います。

◆最後に、アサリを。0826asari

Asarihu_2

アサリは巻き貝じゃないでしょうに、といわれそうですね。

でも似てるでしょ。

アサリの写真を拡大してみてください。左端の先端部は少し巻いてますね。貝殻の模様を見ると、小さい時から大きくなるまで、自己相似の成長過程をたどったことが分かります。

ですから、同じ螺旋の式でシミュレーションできるのです。

アサリは自分をまきこむところまではいかなかった巻き貝、とみなすこともできますね。まきこめなかったものですから、一枚ではなく二枚で体を包んだのでしょうか。

◆一つの「対数ラセン」の式から、いろいろな貝の貝殻をシミュレーションしてみました。自然の仕組みを式に表現してみるとまた、新たな視点、広い視点が生まれてくることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

数学って自然の理解に強力な武器になるのです。自然の出来事を式で表現してみる。そうするとその式から、新たな視点が開けてくる。そこから自然を見る目がまた大きく広がってくる。という、循環が楽しめるのです。

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コメント

巻き貝(タマキビ、イシダタミ)の稚貝と成貝を比較しますと、螺肋(らろく)の巻数はあまり増えていないように見えます。対数螺旋でその形状を近似したとき、巻き貝は自己相似の成長過程をしている様に見えますので、係数aが成長に応じて変化し、θはあまり変化していないのではないかと感じています。どのようにして、硬く小さな貝殻がその形を保ちながら大きくなるのか、私には未知の課題です。

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