アオスジアゲハ羽化
妻がこの蛹もうすぐ羽化するわ、と言っています。なるほど、外側がもうすっかり透けて、中の翅の模様が見えています。
蛹のてっぺんのとがったところなどが空っぽになっているのも分かります。
普通、アオスジアゲハは垂直面に立ったような形で蛹になるのですが、この蛹は飼育ケースのふたの内面の水平面で蛹になってしまっています。
この時点では少しくらい揺れても、事態の進行に影響はないので蓋をあけ、手で持ってもらっての撮影です。
アオスジアゲハ特有の黒と青の模様がたたみこまれているのが見えます。
羽化が始まっているわよ~、という呼び声に、カメラ抱えて飛んでいくと、もう、蛹の殻から出ていました。
翅はまだ伸びきっていません。写真がうっすらと白っぽくかすんでいるのはケースの外から写真を撮っているからです。ケースは洗っていません。というのは、幼虫がケースの内面を歩き回るとき、足場の糸を張りながら歩くので、これがこういう羽化の時にもよい足場になるからです。ケースを洗うと糸が取れ、足場がなくなり、羽化の失敗が増えます。少々汚くても、飼育ケースは洗わない方がいいのです。
今この状態で、クリアな写真が撮りたいと、ふたを持ち上げたら、振動に反応して逃げようとしたりして落ちる可能性があります。この状態で落ちたら、これは羽化にとっては致命的です。翅をまっすぐ伸展できなくなってしまいます。布とかティッシュにつかまらせて救うという手はありますが、それでも失敗することの方が多くなります。
そんなことしたら、もう、取り返しのつかない罪悪感にさいなまれることになりますので、ここは、写真の質よりは羽化の成功を優先しましょう。
もう翅はほとんど伸びています。
少したわみが残っている程度ですね。
体液を送り込んで、翅が湿っている間に一気に伸ばしてしまわなければなりません。一番、羽化にとって微妙で敏感な時間帯が過ぎていこうとしています。
ついでですが、チョウの口はストローのような管がゼンマイ状に巻いていることはたいていの人が知っていますが、昆虫の口というのは「アゴ」の変化したものであり、アゴは体節に1対あった脚の変化したものですから、ストロー状の一本の管といっても実は左右から一対の雨樋のような形の半分の管が合わさってできるのです。羽化の初めの方を間近から見られれば分かります。2本の細い半分の管を一本に合わせる作業をするのです。
ほぼ翅の展開が終わりました。
あとは乾燥させるだけです。翅は乾燥し、翅脈は中空のパイプになります。
体液に圧力を加えるための腹部の筋肉は消滅し、その筋肉を支配して動かしていた神経も消えます。それらは栄養になります。
ここから先は、外見上の変化はないので、あまり人の通らない場所で静かにさせておきます。同じ場所でじっとして、同じ姿でいる限りはそっとしておきます。
飛べる準備が整い、飛びたいゾ、という気持ちになると、人がのぞきに行ったときに翅をパタパタさせたり、歩き回ったりしますので、今度は翅を傷めないうちに外に出してやらなければなりません。
歩き回っていましたので、旅立ちの時、です。
屋外へケースを出し、ふたを開けます。3ショット撮ったところで、パ~ッと飛び立っていきました。
いい顔してるでしょ。完璧な姿ですね。存分に生きてください。それだけが私たちの望みです。
元気でね。何度立ち会っても、この旅立ちの時というのは、最高に嬉しいと同時に、なんとなくジンとする瞬間です。飛び去っていくと、なんだか力が抜けます。
(羽化した成虫の後ろに見えているのは、これから多分羽化するだろう蛹です。今こういう蛹が3匹います。みんな無事に旅立たせてやりたいと夫婦二人して願っています。)
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