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2008年7月 3日 (木)

ナメクジウオ

西木空人さん選の「朝日川柳」(7/1付)に次のような川柳が掲載されました。

 ナメクジに塩をかけてる罰当たり

西木さんのコメントは「ご先祖さまに」となっていました。

◆きっと来るよなぁ、と思っておりました。これナメクジではなくて、ナメクジウオの話なのです。

ナメクジは無脊椎動物、今回の話は脊椎動物側の話なのです。

◆毎日新聞と読売新聞のネット版から引用します。

脊椎動物:祖先はナメクジウオ ヒトと遺伝子6割共通
 ヒトなど脊椎(せきつい)動物の祖先はホヤ類ではなく、ナメクジウオ類であることが、ナメクジウオの全遺伝情報(ゲノム)解読で分かった。京都大、国立遺伝学研究所や英米などの国際研究チームが突き止めた。19日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載された。
 ナメクジウオは脊椎動物の前段階で背骨に似た筋肉組織を持つ「脊索(せきさく)動物」の一種。大きさは3~5センチ。頭部はないが尾びれに似た器官があり、魚のように泳ぐ。ホヤも同じ仲間で、今から5億2000万年以上前に、ホヤ、ナメクジウオ、脊椎動物の順に進化したと考えられてきた。
 研究チームの解析の結果、ナメクジウオのゲノムの大きさはヒトの約6分の1で、約2万1600個の遺伝子を特定した。このうち、1090個の遺伝子をホヤと比較し、ナメクジウオの方が早く現れ、原始的であることを確認した。また、遺伝子の6割がヒトと共通しており、並び順も似ていた。一方、ホヤは独自の進化を遂げた傍流と分かった。
 佐藤矩行・京都大教授(発生ゲノム科学)は「ナメクジウオが脊椎動物の祖先に最も近い。ナメクジウオから脊椎動物が直接的に進化したと考えられる」と話す。
   毎日新聞 2008年6月19日 2時00分(最終更新 6月19日 2時00分)

ヒトなど脊椎動物、祖先はナメクジウオの仲間…ゲノム解読で
 人など脊椎(せきつい)動物の祖先は、これまで考えられていたホヤ類ではなく、ナメクジウオの仲間であることを、日米英など国際チームが突き止めた。ナメクジウオの全遺伝情報(ゲノム)を解読し、ヒト、ホヤなどと比較したもので、成果は19日付の科学誌ネイチャーに掲載される。
 哺乳(ほにゅう)類や魚類など背骨を持つ脊椎動物は、5億2000万年以上前に、背骨の原形である棒状組織「脊索(せきさく)」を持つ脊索動物から進化したと考えられている。脊索動物には脊索が尾側にある尾索動物のホヤ類と、頭部から尾部まである頭索動物のナメクジウオ類があるが、詳しい進化の過程は分からなかった。
 研究チームは、約5億個の化学物質(塩基)からなるナメクジウオのゲノムを解読、約2万1600個の遺伝子を発見した。すでにゲノム解読されているホヤ、ヒトと比較した結果、脊索動物の中でナメクジウオが最も原始的であることがわかった。
 これは、脊椎動物がナメクジウオ類から直接進化したことを裏付けるもので、ホヤ類を祖先と見る従来の説を覆す結果となった。
 研究リーダーの一人である京都大学の佐藤矩行教授(動物学)は「ダーウィン以来の懸案だった脊椎動物の起源が初めてはっきりした」と話している。
   (2008年6月19日03時07分  読売新聞)

こういう話です。

◆イメージとしては下の図を見てください。

Keitouju

ここで間違えたくないのは、現生のナメクジウオがそのまま脊椎動物の祖先であるというわけではない、という点です。(「ヒトの先祖はサルだ」という考え方の間違いは大分浸透していると思いますが。ヒトとサルは共通の祖先から分岐した、というのが正しいのです。)

現生のナメクジウオの祖先から、現生のナメクジウオに至る枝と、脊椎動物の枝が分岐したのです。その分岐の後に、ホヤの先祖が分岐して現生のホヤに至るのです。

その後のナメクジウオの進化はあまり大きなものではなかったかもしれません。でも、ナメクジウオだって、当時のナメクジウオから進化して、現生のナメクジウオはその進化の最先端にいるのです。

脊椎動物の方へ分岐した枝は、その後、魚類やなんだかんだ大きな進化を遂げました。

間違っても、ヒトは進化の頂点に立つ優れた動物だなんて思わないでください。現生の生物たちは、それぞれすべて進化の最先端を生きているのです。進化とは別に「優れたもの」への変化ではありません。環境に適応して多様化していく営みのすべてです。

◆さて、ナメクジウオという名前が、生物にあまり詳しくない方には、ナメクジを連想してしまうだろうなとは思います。あまりいい名前ではなかったですね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%A1%E3%82%AF%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%82%AA

このウィキペディアのページをお読みください。写真もありますし、図解もあります。

ナメクジはというと、無脊椎動物です。動物界を2分する枝の別の枝の方に属しているのですね。ですから敢えて言えば、ナメクジは御先祖の筋ではなく、親類筋というべきでしょう。

もちろん、ナメクジなどと、私たちの「共通祖先」はありました。脊椎動物と無脊椎動物の共通祖先もいました。さらに、動物と植物の共通祖先もいたのです。動物も植物もミトコンドリアを持っていますね、それによって酸素を利用してエネルギーを取り出しています。同じメカニズムで生きる酸素利用型の兄弟生物なのですね。

◆というわけなのでした。

地球上のすべての生物は、それぞれ38億年の歴史を刻んでいます。途中、一回も途切れていません。途切れていたら、今いないのです。

私たちのなかに刻まれた38億年の歴史の一部が解明されたのです。楽しいですね。

私はいったい何者なのか?生物学や化学がそれにこたえようと努力しています。

ここはいったいどこなのか?物理学や天文学がそれにこたえようと努力しています。

自然科学というのは詰まるところ「私は誰?ここはどこ?」を知りたいと、好奇心を原動力として進んでいく学問だといえるでしょう。

◆追記:上に引用したニュースのソースが手に入ります。興味・関心のおありの方はダウンロードしてお読みください。

http://www.nii.ac.jp/kouhou/NIIPress08_07-1.pdf

http://www.nii.ac.jp/kouhou/NIIPress08_07-2.pdf

◆高校で生物を勉強された方は、「カエルの発生」のところで、脊索が現れれて脊髄をつくり、やがて消える、と習ったと思います。

 実は、椎間板ヘルニアでおなじみ、脊椎の椎体の間にある、椎間板の中央部に「髄核」というゼリー状の部分があるのですが、これは、脊索から発生したものなので、ある意味で脊索の名残というか遺物というか、そういうものなのです。

http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/newpress/np06.html

http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/basic-spinal.html

こんなところをご参考に。

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