産卵
◆朝日歌壇 2008/05/19 より
太き胴あらわに見せて産卵の間近き鯉のその目やさしき:(舞鶴市)吉富憲治
馬場あき子 評:産卵時の鯉の目がやさしいという。行動は激しいが命を生む時の目のやさしさは納得させられる。
私自身、和金、リュウキン、オランダシシガシラ、ランチュウ、メダカ、グッピーなどなど、魚の飼育もずいぶんしましたから、産卵間近のメスの腹の膨らみはよくわかります。
一方、産卵のために入れてやったシュロ縄の切れ端などは、産卵が済み次第取り出して、別の水槽に移さなければなりません。
◆朝日俳壇 2008/07/07 より
いま産みし卵にたかる金魚かな:(長崎市)濱口星火
長谷川櫂 評:自分の産んだ卵とも知らず、貪る金魚。世はかくも非情。
金魚もメダカも同じです。「非情」という評には抵抗感があります。広い自然環境の中ならば、多少は親が食べても、さしあたって大部分は残ります。飼育下の狭い空間で起きる「人為的現象」ともいうべきものではないでしょうか。
「人が動物を飼う」ということの哀しさを私は感じます。
◆下の写真は、もうおなじみですが、ササグモです。ただ、腹がとても大きくなっていることにお気づきでしょうか。
産卵間近のメスなんですね。
これまでより、写真が撮りにくくなっています。人影の動きなどに、とても鋭敏になっているのです。このときも、これ一枚しかシャッターチャンスはありませんでした。
産卵を控えて、身を守っているのでしょう。
私は、この産卵間近のササグモに「母性」を感じます。たくさん卵を産んで子孫がつながりますように、と祈りたくなります。
100個卵を産んでも、99個は成虫にはなれない世界です。でも、100の「誕生おめでとう」と、99の「サヨウナラ」の差が、種族を維持しています。
世界は「さようならと、おめでとう。ちょっぴりだけど、おめでとうのほうが多いのよ」。
この表現は、澤口たまみさんの著書「昆虫楽園」山と渓谷社、から引用しました。
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