二十歳
◆京都の大学生、敷田八千代さんの歌を集めてみました。私が何かを書きたいと思った時は、文字の色を変えて小さな文字で書きます。
2007/12/24
東京に一人暮らしている友の小さな小さな部屋のパソコン
ちょっとひねって、「小さな部屋の小さなパソコン」かな?などとも考えてみました。
2008/01/07
こうやって君を忘れてゆくことを忘れていいのだろうか二十歳
2008/01/14
辞書を繰る右手がふいに冷たくて誰かのことを考えている
手が止まっていたのでしょうね。思考が復帰したときに「冷たい」という感じを送ってきた右手を見つめてしまったのでしょう。
2008/01/28
大きなる花束抱え乗り来たる人に市バスの空気やわらぐ
2008/02/04
トロンボーン抱えて冬をゆく人の足音響く哲学の道
トロンボーンが黒いケースに入っています。大きな花束は暖かい空気をもたらしましたが、トロンボーンは空気を切り分けるのでしょう。
2008/02/18
君のことまた考えてドイツ語の試験勉強各駅停車
2008/02/25
単語帳ベッドの中に持ち込んでTOEICまであと七日間
2008/03/03
誰かいるような気がして振り向いた二月の街はみんな一人だ
コンビニのツナおにぎりのフィルムをゆっくり開くように春は来
高野公彦 評:新しい感覚でとらえた春の到来の喜び。
2008/03/17
新しく買ったフェザーのジャケットのポケットに君の手はもういない
馬場あき子 評:フェザーのジャケットに作者の若さが匂う。ポケットの中でつないでいた恋人の手の記憶が悩ましい。
評の「ポケットの中でつないでいた」というのに、少し引っかかっています。「君のポケット暖ったかい」とかいって、彼が勝手にポケットに手を入れてきたりして遊んでたのかなぁ、とも思うのです。ジャケットだからなぁ。
2008/03/31
なぜ君はここに付箋をしたのかと思いつつ読むアラン・シリトー
永田和宏 評:借りた本を読むことはその人の心を思うことでもある。シリトーには「長距離ランナーの孤独」などがある。
図書館の本に書き込みをしてはいけないのですが、古本の場合は書き込みのあるのが面白い。見知らぬ人ながら、前の持ち主は何を考えていたのだろう、と想像しながら、自分ならここはこう書く、などと考えながら。まして、おそらく親しい「君」の付箋。彼の思索をたどろうと、遠くはるかに思考が飛翔してゆくのでしょう。
七時間前のあなたがいたはずの駅のホームのベンチが青い
馬場あき子 評:七時間前はちょっと想像に苦しむが、愛する人のぬくもりを追う気持ちが濃い。
待ち合わせなら「ぬくもり」かもしれませんが、馬場さん自身が「七時間」に苦しんでおられるように、これはおそらく待ち合わせではない。「あなた」の行動と、私の心の間に「七時間」があって、うまくつながらない。悲しくてさびしい、それが「青」なのではないでしょうか。
2008/04/28
そばにいて欲しいときだけそばにいてくれる君なら好きにならない
ふふふっと二人笑って春の日のカフェのテラスにふふふが満ちる
揺れます。振幅の大きな振動です。
2008/06/16
はつなつの小さな矛盾 恋人でなくても君と一緒にいたい
時間と空間を共有し続けようという意志、それが実は「愛」なのだ、と考えています。
2008/06/23
携帯の「圏外」すこし嬉しくて地下一階の哲学講義
2008/07/07
大人対子供でもなく大人対大人でもない母とのケンカ
高野公彦 評:母対娘の口喧嘩。対等に近いが対等ではない微妙な関係が浮き彫りに。
◆というわけで、コメントって疲れますね。写真にコメントつけてる方がやっぱり楽です。
作品を選ぶという行為自体が、自己の表出です。
あ~、しんど。
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