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2008年6月26日 (木)

雨の日に Part3

0622ame3_2_2 この写真の右の方では、水滴が空中にあります。水の柱がくびれて水滴をつくり、柱はもう水中に戻り、水滴だけが空中に取り残されて、これから落ちるところです。

さて、左の方を見てください。別の水滴がありますが、水の円形の波の中心などではありませんね。

これは、別のところで生まれた水滴が、水面に落下したのですが、そのまま下の水中に吸い込まれずに、水面と水滴の間に空気の膜がはさまって、コロコロと水滴が水面を転がっているところなのです。フシギでしょ。

実は、肉眼で水面を観察していると、水滴ができる瞬間などは見えません。コロコロと水滴が転がる方が見えるのです。ある程度の時間は持続しますので眼に見えるのです。

0622ame3_1_2 これは完全に水滴の水面転がりですね。

円形の波は見えません。

◆この現象、その気になって意識していると、結構いろいろなところで見えるのですよ。

・急須からお茶を注いでいて、しぶきがあがったときに、コロコロっと水滴が湯呑の縁の方へ走っていくとか。

・サーバーにドリッパーを乗せてコーヒーを淹れているときに、ドリッパーから落ちてきたコーヒーのしぶきが水滴になって、サーバー内の水面を走るとか。

・洗面器に水を張り、中性洗剤を少し溶かして(泡立たないように)よく混ぜて、その水をスプーンですくって水面にたらすと、かなりの確率で、水滴が水面を走ります。

(理由はここでは説明しません。また、水滴が空気に包まれたまま水中に入ってしまって「水中シャボン玉」になったりもします。私のホームページなどご覧ください

http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/11th/sci_11.htm

◆水滴と水面の間に空気層がはさまるというのは面白いですね。さすがに長時間は持たなくて、その空気層はつぶれて、水滴は水面に吸収されてしまいます。

◆高校で化学を習った方の中には、米粒大の金属ナトリウムを水面に投入すると、金属ナトリウムが球形になって水面を走る、という実験を経験した方があるかもしれません。

金属ナトリウムは 水より密度が大きいのになぜ沈まないのでしょう?

ナトリウムと水が反応すると水素が発生し、同時に発熱します。金属ナトリウムは融点が97.8℃ですから、反応熱ですぐ融解して液体になりますので、表面張力で球形になります。球形になった液体ナトリウムと水面の間に水素ガスの膜がはさまるので、コロコロ水面を転がり走るのですね。はさまった水素が抜けると、ナトリウムと水が接触してまた水素を発生し、間にはさまって転がる、ということを繰り返しているのです。

◆焼けたフライパンに水をたらすと、水滴が走るという現象をご存じないでしょうか?

昔でしたら、ストーブの焼けた天板に水をたらすと水滴が走るというのを、子どものころから知っていました。

100℃を超えた板の上に、100℃で沸騰して水蒸気になる水が、なぜ液体のまま転がるのでしょう?

この現象には名前がついていまして「ライデンフロスト現象」といいます。

水滴が熱い鉄板に接触すると、接触面が瞬間的に沸騰・蒸発して水蒸気になります。この水蒸気が、水滴と鉄板の間にはさまって、直接の接触を遮断します。そして、水蒸気の層に乗った水滴は走るわけです。水蒸気が抜けると、また接触して沸騰し水蒸気が発生し、コロコロと・・・。というわけです。

フライパンの上でしたら、どっちへ転がるかは、傾きによりますし、完全に水平な面でしたら、でたらめな方向に走るでしょう。

もし、のこぎりの歯のような、規則的な凹凸をつくって加熱し、そこに水滴を落としたら?

発生する水蒸気の逃げる向きが常に一定の向きであるなら、その反動で水滴が一定の方向に走るのではないかという研究があります。2006年に物理学の雑誌「パリティ」で読んだのですが、あまりにも面白いので、ここで広くご紹介してしまいましょう。オレゴン大学のサイトですから安心してください。ただし、英語のサイトですので、それは覚悟してください。

http://darkwing.uoregon.edu/~linke/dropletmovies/
このサイトに、水滴が走る動画が何本か載っています。オモシロイですよ~。

こんな解説も載っています。

When a liquid drop is placed on a surface that is held at a temperature much higher than the liquid's boiling point (such as a drop of water in a very hot pan) it hovers on its own vapour cushion, without wetting the surface (figure a below).This phenomenon is called the Leidenfrost effect (or film boiling) and occurs beyond a surface temperature called the Leidenfrost point (about 200 - 300 C for water on flat surfaces, depending on surface quality).

水滴がけなげに見えてくるから面白い。お楽しみください。

◆ところで、上の英語の解説に「film boiling」という言葉が出てきます。日本語にしたら「膜沸騰」でしょうか。

熱い鉄板の上に水滴が載っているのに、直ちに沸騰して水蒸気になって消えていかない、ということは、別の見方をすると、鉄板から水滴への熱の輸送の効率が悪いということになりますね。

冷えたカレーやシチューを温めようとして、うっかり少し強めの火で熱すると、焦げますよね。

熱くなったなべ底で、部分的に沸騰がおこり、水蒸気が発生してカレーを持ち上げ、なべ底から離れてしまう。そうすると、なべ底は100℃を超えて熱くなり、そこへ水蒸気の支えが消えたカレーが落ちてくると、焦げちゃうわけです。

粘っこいものでよくおこります。ゼラチンや寒天を熱するときもよく失敗しますね。

普通にお湯を沸かすときの沸騰は、なべ底の傷なんかが沸騰のタネになって、コンスタントに沸騰がおきスムーズに加熱され、熱輸送も滑らかです。こういう沸騰を「核沸騰」といいます。

液体の粘性とのかかわりで、カレーやシチューのように蒸気がはさまってしまうような沸騰現象を「膜沸騰」というのです。膜沸騰がおこると、熱輸送が滞り、非常に危険なことになります。

料理の失敗なら、まあスケールは小さくて「焦げる」くらいですむのですが、化学工業などで、液体を加熱するときに、核沸騰にならないで、膜沸騰になると大変なことになります。熱輸送がスムーズでなくなるわけですから、熱源側に過剰の熱がたまってしまって、大事故になることがあります。

火力発電、原子力発電などで、水を熱して水蒸気を作らなければならないときに、熱交換の場で「膜沸騰」が起きてしまうと事故になります。

◆物理は実生活に役に立ちます。料理を焦がさないためにも、化学工場で事故を起こさないためにも。

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