ヒラタアブの幼虫
「あ、これはヒラタアブの幼虫ではないか」
アブラムシがいっぱいいれば、テントウムシの幼虫や成虫でもいるかな,、とは思ったのですが、思いがけず、ヒラタアブの幼虫に出会ってしまいました。
葉をちぎるときに、幼虫を落としてしまって、葉に再度くっついてもらったところです。そのため、警戒感で丸くなってしまっています。悪いことをしました。
普通のイモムシ・タイプではないのですよね。なんだか得体のしれない形。頭がどちらかもよくわからないと思います。
で、ちょっと気味悪がられそうですが、アブラムシを食べてくれるので、園芸家の方はよくご存じの虫です。
体がずいぶん透けて見えます。
どうも、蝶の幼虫のようなはっきりした頭とか口が分からないですね。
リラックスするとこんな姿になります。
この齢の幼虫を2匹みつけました。さらに、もっと若い齢の幼虫も見つけたのです。
透明な幼虫です。
左上が頭で、今アブラムシを捕まえて体液をすっているところです。足のようなものが見えるのは、アブラムシの足です。
透明できれいな体です。
体から左へ離れたところに、すでに体液をすってしまったアブラムシの殻があります。ところが、なんと、ヒラタアブの幼虫の頭付近左側にもう一匹アブラムシがくっついています。呑気なことをやっている場合ではないと思いますが、敵だということを認識する能力はないのでしょうね。
このアングルで、最接近して写真を撮ろうとしたら、感動の出来事をファインダー内に見てしまいました。
◆幼虫の体内の背側、正中線沿いに、2本の管がはしご状になった構造が見えますね。これがファインダーの画像の中で「脈打って」いるのです。
昆虫の「開放血管系」というやつです。これほど見事に見たのは初めてです。
感動の余り、妻にはルーペを渡して一緒に観察。「ホントダー」と妻も感激。こういうことは知識としては知っているのですが、実際に目の前で脈を打っているのを見るともうひたすらに見入ってしまいます。
脊椎動物の閉鎖血管系と違って、昆虫の血管系は開放血管系といいます。私たちの心臓の代わりに、「背脈管」という器官があります。途中に穴のあいた両端がオープンな管のようなものです。途中の「穴」のところは弁になっていまして、背脈管を取り囲む筋肉の働きで、この穴と、管の終端部から体液(血液)を吸いこみ、管の中での体液の流れは弁の働きで後ろから前への方向に整流されて、管の先端部から噴出するのです。
「昆虫の生物学」という本を改めて開いてみたら「カイコガやモンシロチョウの幼虫を背面から観察すると、背脈管の拍動数(脈拍数)を調べることができる」と書いてありました。
さりげなく書かれていますが、実際に見るとすごいものですよ。(昆虫学者には常識なんでしょうけれど。)
昆虫には私たちのような呼吸器系はありません。気門から体内に枝分かれしながら伸びた「気管」という管から、体液に酸素が直接拡散していきます。昆虫の小さな体では「拡散」という私たちにとってはまだるっこしい方法も、充分に速いものなのです。
ちなみに、ミミズは完全に体表面から体内へ酸素が拡散するだけの呼吸です。ミミズの体の直径くらいが拡散によって酸素を行き渡らせることができる限界の大きさでしょう。
(私たちは閉鎖血管系で体の隅々まで血管によって血液が循環し、それによって酸素を体組織に送り、二酸化炭素を回収しているつもりでいますが、実のところ、毛細血管の末端から組織の細胞へは拡散によって酸素は届けられているのです。ここのところは高校の生物あたりではちょっと教えていませんので盲点ですね。)
◆さてもうひとつ。頭部から体の両脇を白いものが尾部へ向かって伸びています。これは何だろう?
きっと私の知っている知識内に存在するものです。ですが、実物を目にすると「何を見ているのかが判らない」ということになります。
おそらくは、神経系なのではないかと思っています。成虫では正中線にもっと近寄ったはしご形神経系に再編されますが、幼虫ではもう少しルーズに体の両側に開いているはずです。写真上の方の頭部に1対の角のようなものがあり、そのすぐ下あたりが「脳」ではないでしょうか。
詳しい方がいらっしゃったらご教示ください。
◆いや、すごいものを見せてもらいました。感謝感激です。
アブラムシのついたカラスノエンドウを入れたケースでしばらく飼育してみることにします。
ヒラタアブの幼虫さん、ありがとう!すごい勉強をさせてもらっています!
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