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2008年5月19日 (月)

キセルガイ Part 2

0514kiserugai1 キセルガイの眼に焦点を当ててお話したいと思います。

まずはもう一度眼の観察から。

柄の先が丸く膨らんでいて、その中に「黒い点」があります。この黒い点のところが光の入り口です。この眼の中に私たちの目のような「水晶体=レンズ」はありません。小さな穴から暗箱の中に外界の光が入ると、「ピンホール・カメラ」の状態になって、外の景色が眼の底に写るのです。あまりくっきりした像ではないと思われますが、一応、ピンホールカメラなのだ、と理解してください。

入射した光は眼の底に像を結び、そこで細胞に吸収されて信号に変換されて脳に送られるわけです。ということは、眼に入射した光は返ってきません。入射した光が返ってこないとき私たちはそれを「黒い」というわけです。

動物の眼をよく見てください。必ず「黒い」はずです。眼に入射した光が返ってこないのですから「黒い」のです。(余談:透明人間がいたとして、彼が眼でものを見るとしたら、彼の眼はやはり外から黒く見えてしまうので、体が透明でも、眼だけは隠しようもないはずです。眼の存在が外側からわからないとしたら、透明人間は物を見ることができません。昔、「透明人間は物を見ることができるか」というテスト問題を出題したことがあります。変な教師でしたでしょ。)

岩波生物学辞典から、また引用します。

:[2]・・・。イソアワモチ・アワビ・カタツムリなど腹足類の触覚の基部や先端やアメフラシの頭部皮下には、左右一対の杯眼が発達する。杯眼は感覚上皮が体表から陥入し、通光性の分泌物でみたされ、内腔が小孔をもって外界に通じている。始原的ピンホールカメラの機能があると推定され、オウムガイの杯眼はその完成型。・・・

柄があるということで、有柄眼だったわけですが、眼そのものの構造的には「杯眼」ということになります。

Me 高校の生物資料集から引用します。

杯眼ということの意味がお分かりいただけると思います。

Pinholeeye

この図はオウムガイの杯眼です。ピンホールカメラの眼としては完成形だということです。

外界の景色が網膜に映る仕組みもお分かりいただけるでしょう。

キセルガイではここまでくっきりした像は映らないまでも、ボンヤリ外界の状態はわかるでしょう。明暗だけということもありますまい。

もうひとつ、上の図で、光の入射してくる側に網膜の細胞があって、光の来る側と反対側に神経が伸びているのが分かります。「対光型網膜」といいます。何を当たり前のことを、とお思いのことでしょうが、実は、私たちの眼の網膜は逆でして、「背光型網膜」というのです。光の来る側に神経線維が出てるのです。なんだか変でしょ?

Moumaku1 これも高校生物の資料集です。

図の上に左から右へ光の方向を示す矢印がありますね。

図の左側が眼球内部なのです。神経は一か所に集まって眼球の外へ出ていくわけですが、その集まるところが「盲斑」ということになり、この部分が主観的な視野内での「盲点」になるわけです。

0514kiserugai2 さて、もう一度拡大してお目にかけます。

上の説明を思い出していただいて、じっくりご覧ください。

◆ところで、「でんでんむしむし、かたつむり・・・♪」という歌にもあるように、この触覚ひっこめることができますよね。

どうやってひっこめるのか、ご存じでしょうか?

0514kiserugai3

ひっこんでいく途中の写真です。

「カタツムリの生活」大垣内 宏 著、築地書館 という本がありまして、これがもうカタツムリ類を愛してやまない方の、愛情満ち溢れる名著です。この本から引用させていただきます。

 カタツムリが歩いているところを、ジッと見ていると、障害物に大触覚がふれるまでどんどんと進んでいき、前にある障害物に気づきません。

 何かに触れると、はじめて触覚を動かし、障害物を認識しています。

 小触覚は味覚と嗅覚をつかさどる器官です。小触覚を動かして食べ物を判別しています。これらの触覚を出たり引っ込めたりさせるところをよく見ると、じつにおもしろい動きをしています。ちょうど私たちがセーターの袖口をつかんだまま脱ぐと、袖は中に引き込まれていき、セーターが裏返ってしまうし、手袋やくつ下を脱ぐとき、手袋の指やくつ下が裏返ってしまうことがありますが、これと同じように触覚は中へ中へと裏返って引き込まれていきます。

 出てくるときは、これと反対の動きをして顔をだします。

お気づきでしたでしょうか?もちろんカタツムリだけでなく、キセルガイもナメクジも同じです。先日、ナメクジと出会ったので、眼をチョンとつついてやったら、カタツムリと全く同じひっこめ方をしていました。

くつ下に手を突っ込んで先端をつまみ、手を引いて靴下が裏返っていく様子をぜひ実験して観察してみることをお勧めします。これがカタツムリの眼なのかぁ、と感慨深いものがあるでしょう。

0514kiserugai4 引っ込んでいく眼の柄の先端をよくご覧ください。中央部にかすかなくぼみが見えるのではないでしょうか。

反射光を使ってもっとくっきり写したいという気持ちはあるのですが、キセルガイさんにあまり負担をかけたくなくって。こんな写真で我慢してください。

こんど、カタツムリやナメクジと出会ったら、ルーペでも使ってじっくり観察するような気持になっていただけたら幸いです。

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