ジョンストン器官
「ユスリカ」に桔梗さんからコメントをいただきました。短いご返事を書きこんでおきましたが、もう少し、付け足しておきたいと思います。
◆私のホームページ「案山子庵雑記>理科おじさんの部屋>我が家の仲間たち」に、ユスリカの話を少し詳しく書いてあります。
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/frends/frnds_29.htm
ここです。ここをお読みいただければ、ユスリカの生活の基本はご理解いただけると思います。ぜひご一読ください。(よほどの虫嫌いの方でなければ、平気で読める内容だと思います。ご安心を。)
◆さて、ブログの「ユスリカ」で、触覚を見て、ふさふさした方をオスだろう、と推測しました。それがなぜなのかを簡単にご説明しましょう。
岩波 生物学辞典 第四版 から引用します。
ジョンストン器官(Johnston's organ)
昆虫類の弦音器官の一つで、触覚の第二節(梗節)に具わる特殊な機械受容器。粘管目や双尾目を除いた昆虫の成虫に見られ、特に双翅目のカ科とユスリカ科の雄に発達。触覚神経の周囲に鞘状に配列した無数の弦音器官の集団からなる。各弦音要素の先端は、第二節・第三節(繋節)間の関節膜に付着し、基部は神経繊維により触覚神経に連絡する。一種の自己受容器で、さらに風圧・気流・振動などの外的刺激をも感受しうるとされる。ミズスマシは触覚梗節の下面を水面に接しつつ遊泳し、水辺などに近づくと、反射する水波による上記関節膜の張力変化を通してこれを感知するといわれる。
言葉だけだと分かりにくいでしょうから、高校生物の図解からも図を引用します。(第一学習社の「総合図説生物」からの引用です。)
触覚の根本のところを、感覚細胞が取り囲んでいて、触覚に伝わってくる振動を鋭敏にとらえるのです。
その振動は、自分が飛んでいる時の風の流れであったり、メスの羽音の空気振動だったりするわけです。
ジョンストンさんが1855年に発見しました。1894年に描かれた図というのをお目にかけましょう。(安富 和男 著、「詩の中の昆虫たち」三一書房、1997年、から引用。)
見たものを、そのままにきちっと書く、ということの大切さがわかりますね。主観を排除して、見たままを書く、というのはとても大変なことなのです。
でも、それによって、時をこえて、図の価値が生きることになるのです。
ヒトの聴覚は20Hz~20kHzとおおざっぱにいいますが、ユスリカの聴覚はおそらく、互いに相手の翅の出す音さえ聞こえればいいのであって、その周波数帯で非常に鋭敏ですが、他の周波数はほとんど聴いていないようです。
さて、ユスリカのオスでジョンストン器官が発達しているということは有名なことでして、そのため、写真を見て、触覚がふさふさしている方をオスだろうと私は判断したわけです。
http://jfly.iam.u-tokyo.ac.jp/lab/images.html
ここに、ジョンストン器官の詳しい画像がありますが、詳しすぎて、かえってよくわからないかもしれません。
http://www.fujijuku.net/biollec/15.HTML
ここには、高校レベルの説明があります。
◆最後に、今年の3月、ネムリユスリカについて、新しい発見があったようです。新聞などの記事を掲げますので、どうぞ。
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「乾いても再生」の秘密:体全体のトレハロースに:東工大など昆虫で解明(朝日新聞 2008/3/28)
アフリカの乾燥地帯にすむ昆虫ネムリユスリカの幼虫は、ミイラのように干からびても水につければ生き返る。その秘密はガラス化したトレハロース(糖類の一種)を体内に蓄積し、たんぱく質などを保護する仕組みにあると、東京工業大や農業生物資源研究所のグループが明らかにした。米科学アカデミー紀要電子版に論文が発表された。
ネムリユスリカの幼虫は小さな水たまりで暮らし、乾期に水が干上がり体がカラカラになっても、水につかると再び活動を始める。
乾燥すると幼虫の体内でトレハロースが大量に作られることはわかっていた。今回、乾燥した幼虫でトレハロースの分布や状態を詳しく調べ、体中にまんべんなく広がり、約65度以下の温度ならばガラス化と呼ばれる安定した固形状態にあることを突き止めた。体内のたんぱく質や細胞は、このガラス化したトレハロースの中で、再び水とめぐり合う時まで保護される。
櫻井実・東工大教授は「ネムリユスリカは乾燥状態で17年持ちこたえた記録がある。成果を応用して臓器や組織の長期乾燥保存ができれば、移植医療が変わるかもしれない」という。
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ネムリユスリカ:幼虫が干からびても生き抜く謎、解明
アフリカ中部の半乾燥地帯に生息する昆虫「ネムリユスリカ」の幼虫が、干からびた状態で長い間休眠できる仕組みを、東京工業大と農業生物資源研究所の研究チームが解明した。体内に糖の一種のトレハロースを大量に蓄積し、これがガラス化して全身の組織を保護していた。
ネムリユスリカの幼虫は、乾燥状態にさらされると代謝活動を停止して干からび、雨期になって水に浸ると元に戻る。干からびて17年後に元に戻り活動した例もあるという。通常は体の85%を水が占めているが、乾燥した環境では体内でトレハロースが作られ体重の約2割を占めることが分かっていた。
研究チームはトレハロースだけが吸収できる赤外光を使い、幼虫の体内に満遍なくトレハロースが分布していることを発見。さらに、トレハロースがガラスのように固まって細胞を保護していることも突き止めた。
農業生物資源研究所の奥田隆・乾燥耐性研究ユニット長(昆虫生理学)は「乾燥地帯にすむ動物のほとんどは水を逃がさないようにして体を守るが、ネムリユスリカだけが干からびることで体を守るように進化したことは興味深い。この機能を、食品や臓器の常温乾燥保存などに応用できるのでは」と話している。3月25日付の米科学アカデミー紀要に発表した。
毎日新聞 2008年4月6日 東京朝刊
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サイエンスポータル編集ニュース
【 2008年3月31日 乾燥しても生き残れる昆虫の秘密解明 】
ネムリユスリカという昆虫が炎熱下で水分をほとんど失っても死なず、水分を得ると息を吹き返すメカニズムを東京工業大学と農業生物資源研究所の研究チームが解明した。
櫻井実・東京工業大学バイオ研究基盤支援総合センター教授らが研究対象としたのは、アフリカ中部半乾燥地帯原産のネムリユスリカの幼虫。岩盤の窪みなどにできた小さな水たまりで生活する。生物の体の60~70%は水から成り、この水のおかげで生命体にとって不可欠なタンパク質や核酸、細胞膜がその構造、機能を維持することができている。ところが、ネムリユスリカの幼虫は、カラカラに乾燥(含水率3%)しても、水に戻せば1時間程度で蘇生することが知られていた。
櫻井教授らは、赤外吸収スペクトロ測定という手法で、干からびたネムリユスリカの体を調べたところ、トレハロースという糖が体内に万遍なく蓄積され、水に代わって細胞膜の表面に結合していることが分かった。トレハロースはガラス状態になっており、生体物質をカプセル状に包む込むことから、細胞膜が通常の生命活動状態の時同様、流動性の高い状態に保たれていることも確認された。
トレハロース自体は、きのこなど乾燥に強い動植物に含まれていることが分かっており、農業生物資源研究所では既に、トレハロースを特異的に細胞の内外に輸送するタンパク質の遺伝子をネムリユスリカから単離することに成功している。
今後、研究を進めることで、細胞などの生体組織を生きたまま常温乾燥する方法や、乾燥に強い作物の開発などが期待できる、と研究者たちは言っている。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
ユスリカのいろんなお話ありがとうございました。
蚊柱の意味も初めて知りました。
本当に激しくて、はかない、ユスリカなんですね。
でも、ネムリユスリカはもの凄い生命力で驚きました。先々いろんなものに役立ちそうですね。
投稿: 桔梗 | 2008年4月19日 (土) 12時52分
「ユスリカ」というのは本当は「科」の名称で、種名ではないのですが、普通は、「ユスリカ」っていっていれば事は済むのです。ところが、そうはいかない事態が起こりまして・・・。
その話は、新たに投稿します。
投稿: かかし | 2008年4月21日 (月) 13時57分
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