アブのホバリング
足元のベゴニアの花の蜜を吸いにハナアブ(正式名はよくわかりません)がやってきて、ホバリングしながらあちこちの花を訪れていました。
フラッシュをたきながらあてずっぽうにシャッターを切り、数枚撮影して後で見たら、2枚くらいの収穫がありました。その1枚です。ホバリング中の羽がフラッシュを浴びて写っています。
トンボのホバリングは前後の翅を互い違いに打ちおろしているようですが、ハエやアブのホバリングは、トンボとはまた違う技術ですね。翅が1対しかないですしね。後翅は「平均棍」という先端が丸まった短い棒状になっていて、前翅と同期して振動します。
高速で振動する物体=振動子を考えます。振動子の振動面を変えようとすると振動子は抵抗します。(一種の慣性のようなものですね)。
独楽や自転車の車輪など回転する物体も、回転軸の向きを変えようとすると抵抗しますね。(そのおかげで独楽は首を振りながら回転を続け、自転車は倒れにくくなりますね)。
回転する「コマ」を使ってジャイロスコープができます。同じように、高速で振動する振動子もジャイロスコープになります。小型のVTRやデジカメでも圧電振動子を使ったジャイロスコープで手ぶれ防止をしているものがあります。
さて、ハエやアブの平均棍は「高速振動子」ですからジャイロスコープになっているのですね。平均棍は体についているのですから、姿勢が変わると平均棍も一緒に動かなければなりませんが、振動子としては抵抗しますので体から力を加えて振動面を変更させることになります。その力を検出すれば(感じ取れば)姿勢の変化を知ることができるわけです。(このあたりを「コリオリ力」で普通説明しますが、コリオリ力は実在の力ではなく慣性力の一種でして私の好みの力ではないので、今回はそれを避けた説明を試みました。)
平均棍を取ってしまうと、ハエ・アブは自分の姿勢が把握できなくなって、うまくとべなくなるそうです。
あまり好まれない昆虫ですが、ハエの仲間は昆虫界でも屈指の飛行能力を持っているのです。そんなことも頭の隅っこに置いて眺めてみてください。見え方が違ってくるかもしれません。(人間が開発した飛行機やヘリコプターなどの飛行機械の能力など、昆虫たちの飛行に比べたらあまりにもチャチなものでしかありません。)
[追加]:オオスカシバを含むスズメガの仲間では触覚がジャイロスコープになっていてホバリングができるのだということです。またネジレバネという寄生昆虫がいるのですが、メスは足や翅を持ちませんがオスは目、足、翅を持ち、前翅が平均棍となっています。このネジレバネのオスはホバリング飛行ができるそうです。
「生き物たちの ふしぎな超・感覚」森田由子 著、サイエンス・アイ新書、2007年7月発行
からの孫引きです。
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